皆さまこんにちは。
酒田達臣です。
前回のメッセージでは、
私の接骨院にいらした
急性期脳梗塞の1例をご紹介しました。
今回は、何故私がこのように
「本来の業務範囲」以外の患者さんの病態も、
微力ながらも力の限り把握しようとする「情熱」を持つに至ったのか、
その理由となった経験談をお伝えさせていただきます。
―それは、
「今までに亡くなっていった患者さんの想い」
そして
「その患者さんたちへの誓い」―
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20年以上前、開業間もないある日。
私はその70代男性患者さんを
待合室から施術室へとお呼びしました。
「○○さーん、電気の方へどうぞー」
そうしたら、
その患者さんは、何歩か歩いたところで
転んでしまいました。
他の患者さんを施術していたので、
転んだ瞬間は見ていなかったのですが、
物音に驚いた私は、声をかけました。
「○○さん、大丈夫ですか!?」
しかし、○○さんはすぐに起きあがると、
ご自分で歩いて電気治療器の前に座られました。
「大丈夫、大丈夫、早く電気かけてくれ」
でも、
何も無い平坦なところで転ぶのはちょっとおかしいなと思い、
施術を中断し、
状態を把握するために○○さんの前に行きました。
「どこも体に痛いところはない」とのこと。
転んだことでの外傷はないようだ。
しかし、そもそも何故転んだのか、その原因を掴んでおく必要がある。
そう、感じました。
何故、何もつまずく物がない平坦なところで転んだのか?
急にバランスを崩した?
急に下肢の力が抜けた?
念のため上肢と下肢の筋力をテストしてみると、
軽度ですが左上肢と、同じく左下肢に筋力低下がみられました。
ここで私は、
「これはもしかしたら、今、左片麻痺が起きたのかも知れない、
今、突然、脳の中で何かが起こったのかも知れない。」
その可能性があると感じました。
「頭は痛くない?」
「めまいは?」
「吐き気は?」
「物は二重に見えない?」
「ろれつが回らない感じはない?」
いくつか問診しましたが、それらはすべて、「ない」とのこと。
当時の私が収集した情報はこれだけでしたが、
この情報から私は、次のように考えました。
―この問診結果からは
「くも膜下出血」は否定できるかも知れないが、
「脳梗塞」は否定できない。
今、まさに今、この患者さんは脳梗塞を起こしたのかも、知れない―
「○○さん、念のためそこの脳神経外科クリニックに
すぐに行った方が良いと思います。」
「えー!?いいよ!行かなくて良いよ!大丈夫だよ!」
「じゃあ、救急車を呼びますよ。」
「うーん、しょうがないなぁ、わかったよ…。」
すぐに奥様に連絡するようスタッフに伝えて、
私は○○さんを脳神経外科クリニックに連れて行きました。
脳梗塞を疑って、患者さんを医師の元へお連れしたのは、
これが初めてのことでした。
待合室で待っていると、ほどなく奥様が駆けつけて来られました。
その時の情景は今でも脳裏に焼き付いています。
「大丈夫だからね、大丈夫だからね。」
奥様は○○さんの横に、ぴったり体を寄せて○○さんを抱き寄せるように座って
両手を握りしめ、何度も何度もそうやって声をかけていました。
奥様は○○さんの様子がいつもと違うのを、
敏感に察知したのだと思います。
診察室に呼ばれ、私たちが部屋に入ってから
院長先生が行われた一連の診察実技は、今でもすべて覚えています。
診断結果は、
「やはり、脳梗塞じゃないかと思います。」
ということでした。
「うちでCTを撮っても良いのですが、急性期脳梗塞は
発症72時間以内はCT画像に写らないので、
撮らずに大きな病院を紹介します。」
そして、患者さんはすぐにその大きな病院を受診することになりました。
私は一安心して、仕事に戻りました。
翌日。
○○さんのご近所の患者さんが接骨院に来院されて、
こうおっしゃいました。
「○○さん、今朝倒れたのよ!救急車で運ばれたの!」
「ええっ!?昨日大きな病院に行ったんじゃ…?」
「昨日行った病院では、大したことないって、帰されちゃったのよ!」
そして、○○さんは
入院したまま、再びご自宅に戻ることなく、
2週間後に亡くなりました。
何故なんだ?
と私は思いました。
何で?
どういうことなんだろう?―
この○○さんのことは、20年以上経った今でも、
はっきりと覚えています。
○○さんの死が、
私にある誓いをもたらしました。
―「ドクターに紹介して、それで安心して終わりにしてはダメだ。
最後まで、フォローしなくてはいけない。」―
この誓いを、どんな時でも貫けるようになるまでには、
○○さん以外にも、たくさんの患者さんの死を
目の当たりにしなくてはなりませんでした。
しかし今。
どんな障壁があろうとも。
しっかりとした科学的根拠を掴んだものに関しては、
たとえ何人のドクターに否定されても、
患者さんの命を優先することが、出来るようになりました。
見つけてもらえるドクターに
患者さんを送り届けられるまで、
何度でも紹介状を書くのです。
この信念は、○○さんに学ばせていただいたことが根幹であり、
元々の発端になっています。
どうするべきか判断に迷うときは、いつも
○○さんや、その他の亡くなっていった患者さんのことを
思い出しています。
これが、私の中心軸になっています。
私は○○さんのお葬式の日に誓ったのです。
「○○さん、助けてあげられなくて、ごめんなさい。
でも今度、○○さんのような患者さんがいらしたら、
きっと助けるから、どうか力を貸してください!」―
○○さんは、セカンドアッタクで亡くなりました。
脳梗塞は、脳の中の血管内に
「血栓」などが詰まることによって引き起こされます。
血栓は、体のどこかの血管の内壁にできた血の塊です。
それが剥がれて、血流に乗って飛んで行き、
脳の中の血管に詰まってしまうわけです。
そうすると、その先にある脳組織が「突然」、機能不全に陥ります。
数時間、血流が途絶した状態が続くと、
ほどなく、その部分の脳組織は「壊死」していまいます。
そして、一生、元に戻ることはありません。
血栓が、
このように脳の血管に詰まれば、脳梗塞、
心臓の血管に詰まれば、心筋梗塞、
肺の血管に詰まれば、肺塞栓となるわけです。
いずれも、命に関わる病気です。
特に脳梗塞で私たちが注意しなくてはならないのが、
症状が比較的軽く済んだ「ファーストアタック」です。
これが見落とされやすいのです。
動脈硬化や心房細動などがベースとなってできた、血管内の血の塊、
これが、勢いよく流れる血流の中でひらひらしながら、
今にも大きな塊となって剥がれて
ボーンと飛んで行ってしまいそうになっているところを、想像してみてください。
このとき、血の塊の小さな「かけら」だけが先に剥がれて飛んで行く、
これがファーストアタックです。
血栓が小さいので、脳梗塞を起こしても
症状は軽く済んでしまいます。
細い血管が詰まるだけで、障害される脳組織の領域が狭いからです。
しかし、どんなに症状が軽いからと言っても
これはれっきとした脳梗塞です。
また、血栓が一旦詰まりかかるが、運良く再開通して、
24時間以内に症状がすっかり消え去ってしてしまうものもあります。
これは「一過性脳虚血発作(TIA)」と呼ばれています。
このファーストアタックやTIAを見逃すと、
○○さんのように翌日、あるいは1年後かは分かりませんが、
メインのセカンドアタックが来て、大きな血栓が、
とうとう剥がれて飛んで行き、二つとない命が奪われてしまう。
簡単にそういうことになってしまうのです。
そして、このファーストアタックを見つけるのは、そのすべてに
ものすごく難しい知識と技術が必要というわけではありません。
○○さんの時に私は、
神経学的検査法を、まだ完全に身に付けてはいませんでした。
当時の私が行ったのは、上肢と下肢の筋力検査だけです。
それでも、見つけることが可能なケースもあるのです。
まだ見つけ出したことのない方々は、
まずは、この「事実」を知ることから、始めていただければと思います。
そして、少しずつ
各種のテスト法、検査法、病態推論のやり方をマスターしていき、
鑑別判断の精度を高めていっていただきたい。
そしてその力で、皆さまの目の前の患者さんを救っていただきたい。
そう心より願っております。
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セラピストには、施術力や経営力などいくつもの能力が要求されます。
しかし、その中で最も大切なベースとなるものは、
「医学的事実に基づいた、病態推論の能力」だと
私は思っています。
それがないと、正しい治療を先に進めることが、
本来は、出来ないからです。
私の接骨院は、どこにでもあるような、町の小さな接骨院です。
しかし、○○さんと同じ、症状が軽くて見落としやすい
急性期脳梗塞の患者さんが、1年で5人も来院されたことがあります。
「重大疾患を見落としてしまっている可能性」
これを常に意識して、
見落としを少しでも減らす方向へ向かった努力をすることが、
私たちには必須だと実感しています。
―もし○○さんが自分の大切な家族だったら―
皆様はその時、どのようにお感じになられるでしょうか。
この想像力が、私たちに大きな力を発揮させてくれる、そう感じています。
そして、
「こういった重症患者さんも含めて、
私たちが抱えているべきではない患者さんを
医学的根拠のある技術で見つけ出し、
専門医にコンサルトして、ちゃんと救うことが出来る、
そういうセラピストや医療従事者の皆さんが、
全国でスタンダードになること。」
これが私の夢です。
このセミナーシリーズは、「どなたでもわかりやすく、かつ実践的な実力を獲得出来る」をモットーに開催します。
今回のセミナーでお伝えする内容をお聞きいただければ、
皆様も、近い将来必ず、「脳梗塞の患者さん」を見つけ出す日が来ます。
そしてこの先の治療家人生の中で、何度も何度も、見つけ出していくでしょう。
私が経験させていただいた、すべての診療科にわたる
22年間分の大量の重要症例。
そこから得た鑑別のポイントや、診察実技。
専門医の確定診断がついた、根拠のある症例だけを使って、
これからのこのセミナーシリーズで
余すところなくそれらを、皆さまにお伝えさせていただきたいと思います。
「鑑別判断」の
“技術”と
“必要最低限の知識”と
“スピリット”。
この3つをご一緒に学びながら
患者さんに隠された病態を
少しでも見つけ出し
「大事な場面でもお役に立てるセラピスト」を
目指しませんか?
その先には、
同じ情熱を持つたくさんのドクターや
セラピストとの出逢いが待っています。
セミナーの詳細はこちらです。↓↓↓
https://mediways.co.jp/topics/20200209/